生と死の境に

”「普通がいい」という病”という本からの孫引きになりますがこんな文章が引用されていました。暗黒舞踏大野一雄さんの言葉だそうです。

あるところにくると死と生はひとつになる。いま生きていたかと思うと、今度は死のところまでいく。いつも私が言うように、花を見て美しいと思う。そうすると、階段を降りていくんです。死の世界へと。花の世界は死の世界だ。花を見ている。魂が交感し、肉体がひとつになって、自分が生きていることを忘れる。死そのもののなかで踊っている。あるときは死の世界で、気がつくと生の世界。死、生、死、生。

漂う勇気が、死と生が背中合わせになって。言葉でなくて、あなたが発する輝きだ。宇宙全域とそのかかわりのなかで、あなたは石蹴り遊びをしているんだ。

…あと一歩いくと、肉体が消滅する。死んでしまう。それから先は幽霊ダンス、幽霊ダンス、お化け。肉体がだめになるからお化けダンスになるのか。あんまり美しいもんだからさ、美しいから肉体のこと忘れちゃって。死んでからも、私は幽霊ダンスをやりたい。

大野一雄 稽古の言葉」より

メメント・モリという言葉があります。私たちは死をみつめることで初めて、リアルな生を生きる事ができます。そして生と死が渾然一体となって輝きをいっそう増す中で、肉体すらも忘れて幽霊ダンスを踊っているという境地に私は思わず涙が出てしまいました。

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