経典入れ

30年以上前ロンドンの蚤の市を覗いていたら長方形の木箱を見て、何を入れていたのかは知りませんが、箱全面に細かく彫刻が施されているのに気に入って購入しました。長方形の箱のふたは屋根型に、四隅には猫足のような足があり、そこも彫刻がされています。花や動物やはっきりは記憶が薄れていますが、形や全体の様子は今も覚えています。後で調べると仏教の経典入れと言うことが判明しました。
彫ってある図柄は、もしかしたら仏典の中のお釈迦様の一生か、あるいは経典を顕したものかは、今にして思えば調べたかったなと、おもいます。箪笥の中に入れておいたら、とても良い臭いが引き出しの中に漂っていました。白檀の香りです。どんなに経典を大切にしていたのかが解ります。どなたかに購入していただきましたが、時々思いだされます。
このごろ秋の虫が、鳴き出しています。
小さな虫も潰さない様に、注意して歩いたと言うお釈迦様、命に対する慈愛を思うとき、何千年も前と、今と、人間はどう変わってきたのかなと、あの箱を思い出して、考えています。


「秋の夜長は昔話に限るわ」

(k)